近年、IoTやDXを活用した工場のスマート化による生産率向上や安全操業への関心が高まりつつあります。当社のスマートファクトリー推進部では、映像を基軸とした課題解決のソリューションを提供しており、本記事では既設のITVカメラを活用した映像管理システムをご紹介致します。
遠隔監視システムとは、遠く離れた場所からネットワークを通じて、リアルタイムで監視対象の映像や音声、センサー情報などを収集・分析するシステムのことです。
工場監視には、以下のような理由から遠隔監視システムが必要とされます。
機械の動作や作業者の作業状況を遠隔で監視することで、危険な状況や事故を未然に防止します。
遠隔監視システムを用いることで、工場内の機械やラインの状態をリアルタイムで把握し、生産効率を向上させます。
遠隔監視システムにより、常時スタッフを配置する必要がなくなるため、人件費や交通費などのコストを削減できます。
製品の品質を一定レベル以上に保つために、工場内の各種データを収集し、分析できます。
以上のように、遠隔監視システムは工場監視において非常に重要な役割を担っています。
従来、多くの現場で採用されていたのは「ITV監視カメラ」というアナログカメラです。
ITVとは、「Industrial Television」の略で、工場やプラントなどでの監視用カメラのことを指します。ITV監視カメラは、アナログカメラの一種であり、ネットワークカメラと比較すると以下のような特徴があります。
ITV監視カメラは、アナログ信号を使用するため、シンプルな機能しか備えておらず、操作が簡単です。一方、ネットワークカメラは、多機能であり、設定や操作が複雑である場合があります。
ITV監視カメラの製造コストはネットワークカメラと比較して低く、導入コストを抑えることができます。
ITV監視カメラは、アナログ信号を使用するため、直接インターネットに接続することができません。
スマートファクトリーが注目されている今、工場管理にカメラ映像を活用する企業が増えています。映像から工場の生産状況や安全を見守るには、カメラ映像を記録するシステムが重要であり、そこで欠かせないのがVMSです。
VMSと相性抜群なのはネットワークカメラであり、この2つを組み合わせた映像管理システムには以下のようなメリットがあります。
・現場をリアルタイムに監視できる(事務所・管理室などの遠隔地から)
・映像の常時録画保存と長期的な保存が可能
・保存映像の再生
・必要な映像の検索が簡単
・複数カメラの一元管理
これらのメリットを活用することで、工場の安全管理はもとより生産調整や制御といった生産管理システムにも応用でき、工場のDXに役立つものとなります。
ではVMSで使えるカメラとは、ネットワークカメラだけなのでしょうか。皆さんの工場ではITV(Industrial Television)カメラと呼ばれる、アナログカメラを多く使用されていますか?
VMSを導入するには必ずしもネットワークカメラが必要なわけではなく、実は、従来からあるITVカメラでも取り込むことができるのです。
動画管理システムでスマートファクトリー化を促進|複数カメラの一元管理やリアルタイム監視で工場監視を管理を効率化|VMSについてくわしくみる
技術的には既設のITVカメラとVMSを組み合わせることは可能ですが、注意点がいくつかあります。ここでは、ネットワークカメラと比較した場合の課題とその対応方法をご紹介いたします。
最大の課題は接続方法です。VMSで扱える情報はデジタル化された映像信号で、物理的な接続方法もネットワークケーブルを用います。
ネットワークカメラは当然、デジタル信号出力が可能です。接続も給電もネットワークケーブル経由でできるPOEタイプが主流になりつつあります。一方、一般的なITVカメラの映像はアナログ信号で、その伝送には同軸ケーブル(ご家庭のアンテナ線を想像してみてください)を使用しています。そのため、従来のITVカメラそのままではVMSにつながりません。
そこで登場するのが「エンコーダ」と呼ばれるITVのアナログ信号をVMSで扱えるデジタル信号(データ)に変換する装置です。エンコーダは同軸ケーブルからネットワークケーブルへの変換も行います。
VMSにはカメラの制御機能があります。ネットワークカメラであればPTZ(パン、水平方向の位置調整)、チルト(上下方向の位置調整)、ズーム(前後方向の位置調整/画角調整)などカメラの制御もVMSで行うことができますが、ITVカメラを流用した場合には別途コントローラ(既設)が必要になります。
ネットワークカメラであればPOE給電のためのケーブル一本で済みますが、ITVカメラでは制御盤や電源アダプターを介してカメラに電源供給しなければなりません。屋外設置の場合には、保護ボックスや端子台ボックスが別途必要になるため、必要機材が増える傾向にあります。
映像のクオリティもポイントの一つです。アナログカメラは最新のネットワークカメラに対して画素数が少ないのが一般的です。そのため、エンコーダでデジタル変換した際に全体的に粗い画質となってしまい、鮮明な映像が得られにくいという欠点があります。また、長期間使用されてきたことによる経年劣化による影響もあります。
ノイズによる接続不良の発生も注意すべきポイントです。映像を送るために使用する同軸ケーブルは耐ノイズ性が高く、非常に優れてはいます。しかし、ケーブル長が長くなるにつれて、ノイズの影響を受けやすくなるのです。
長距離での映像伝送の場合、信号減衰や周囲の稼働設備からのノイズを拾ってしまうことで、デジタル変換の際に通信エラーの原因となり、カメラとの接続異常(VMSへ取込む映像の品質低下)を招くことがあります。ノイズ対策には配線や設置方法を考えることが必要です
工場に従来から設置されているITVカメラを活用してVMSを構築するメリットは、主にコストと運用面です。ネットワークカメラを導入するのが理想的ですが、既に設置されているITVカメラをすべてネットワークカメラに置き換えるのは、コストがかかります。
しかし、既存のアナログカメラと同軸ケーブルをVMSに取り込めば、コスト的に安くなり、何より既存のシステムを再利用することが可能です。さらにオンプレミスの録画レコーダーから、クラウド型のVMSにすることで低コストかつ高性能の映像管理システムを構築できます。
従来からあるアナログカメラと録画レコーダーでは、ただ映像を記録するのみでした。一方、VMSはAI等と連携するときのプラットフォームとして使用することで、侵入検知による安全管理や顔認証による入退室管理といった映像の有効活用が可能なのです。
ITVカメラは工場の監視に最適で、既設のアナログカメラシステムをVMS(ビデオ管理システム)と組み合わせることで、リアルタイム監視が可能になります。これにより、安全管理や生産効率の向上が図れます。また、既存設備を活用することでコスト削減も期待できます。ただし、接続方法や映像品質の課題があるため、適切な対応が必要です。
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