AI技術の発展に伴い、現代では映像データの利活用が私たちの生活やビジネスに不可欠です。しかし映像データを日常で目にはしていても、重要性について意識した機会は少ないのではないでしょうか。本記事では、そんな映像データについて、独自の映像圧縮ソリューションを提供する株式会社ティ・エム・エフ・アース 斎藤社長にお話を伺いました。
―――TMF Earth社様といえば、独自の映像データ圧縮ソリューションをお持ちかと思います。まずは、なぜこの技術を開発するに至ったのか、その経緯をお伺いできますか?
**斎藤さま**
端的にいえば、人間の可能性を最大限引き出したかったからです。
というのも、人間には視覚・聴覚・味覚・触覚・嗅覚のいわゆる五感が備わっているわけですが、情報の85%は“視覚”から得ていると言われています。日常の中で認識されにくいことだとは思いますが、改めて数値で見ると情報の圧倒的大部分を目に頼っていることがわかりますね。
そこから、「ではその視覚に飛び込んでくる“画像”や“映像”を、私たちはどれだけ活用しきれているだろうか」という疑問を持ち、“映像技術が正しく活用される世界をつくりだそう”と取り組み始めたのが2017年頃のことでした。
―――たしかに、今まで情報をどのように得ているのか意識的に考えた機会は少ないように感じます。日常の光景はもちろん、本やTV、パソコン・スマートフォンといったあらゆる“視覚”から私たちは膨大な情報を得ているのですね。
**斎藤さま**
とはいえ、どんな映像でも情報源として成立するわけではありません。ここで例として、当社の映像圧縮技術が生まれるきっかけにもなった監視カメラについて考えてみましょう。
せっかく撮影された監視カメラの映像であっても、9割は見られません。なぜなら、監視カメラの映像は、万が一のトラブルが起こった際に確認されることがほとんどであり、常にその映像を見続けるためのものとは考えられていないからです。
その意味では、「映像が撮られていること」自体に価値があるように錯覚してしまうかもしれません。しかし、映像自体は撮影されていたとしても、映像が不鮮明だった場合どうなるでしょうか。実際に当社に寄せられた相談の声は、「映されている内容が不鮮明で判別できない、どうすれば良いか」でした。
―――“ただ映像があれば良い”わけではない、ということですね。
**斎藤さま**
監視カメラの存在目的は、“万が一のトラブルが起こった際に、そのトラブルの内容を確認できること”です。この目的を達成するためには、「映像が撮影されていること」だけでなく、「映像が鮮明であること」も必要となるわけです。映像に鮮明さを求める動きは、現代のAIを活用した画像認識技術においても同様です。
すると今度は、データサイズの観点から“鮮明な映像を安定的に送受信するにはどうすべきか”という課題も立ちはだかることになります。映像の画質を上げれば上げるほど、データサイズは大きくなってしまうため、データを送ること自体が困難とされます。この時に解決策として開発したのが、当社の超低遅延データ伝送を可能とする映像圧縮技術なのです。
―――鮮明な映像を安定的に伝送するためには、映像データの圧縮をすれば解決できるはず。このような根本的な目的意識から生まれたのが、TMF Earth社様の映像圧縮技術ということがわかりました。それでは改めて、技術の具体的な特長を伺えますか?
**斎藤さま**
当社技術の主な特長としては、まず超低遅延・超クリア画質の両立が挙げられます。
一般的には、 高画質にするとデータサイズも大きくなり、それに比例して伝送速度にも遅延がみられます。しかし当社の映像圧縮技術を用いた場合、データ伝送時の遅延は0.5秒。つまり、ほぼ遅延しないことを意味します。それも、映像品質は当然クリアなままです。
―――画質を維持したまま、遅延をほぼ無くせるというのは画期的ですね。
**斎藤さま**
さらに実用性を考えると、コスト面も重要な課題であることは自明です。大容量のデータ通信をしようとした場合、LTE・4G回線よりも5Gは高速ですが、料金は割高となってしまいます。また、回線設備の整備もおこなう場合、設備的コストもかさんでしまいますよね。
しかし当社の映像圧縮技術を活用すれば、データサイズの小型化だけでなく低帯域化も実現されるため、LTE・4Gのままで接続が途切れることもなく、安定かつ高速に高品質な映像データを伝送可能です。
技術的には有用であったとしても、実用化が現実的でなければ意味を成しません。ポジティブな技術の導入が、経営的なコストを生み出してしまうことは避けなければならないわけです。私たちはそうした費用対効果(ROI)も考慮した上で、必要とされる機能の実装をおこなっています。
また、当社の圧縮技術は標準規格に則っているため、搭載するハードウェアを選びません。この自由度が保証されていることから、実際に多くのお客様からお問い合わせいただいています。
―――では、TMF Earth社様の圧縮技術が活用されているシーンを教えてください。
**斎藤さま**
例としては、人手不足の影響などから人の目だけでは管理が難しいとされる建設・建築・工場といった生産現場が挙げられます。
建設・建築・工場、いずれの現場も少人数で広い土地を移動しながら作業をこなす傾向があるため効率化が重要です。具体的には、熟練工の方々のリタイアや少子化の影響もあり、労働人口の減少が著しいことから人手不足を効率改善でどう補うかが喫緊の課題とされています。
このような状況下で映像技術の活用により、遠隔から現場状況の確認や、現場人員への遠隔指示といったことが可能となりました。しかし、先ほどご紹介した監視カメラの例のように不鮮明な映像や、不安定な通信環境で接続が途切れてしまうことによって効率化が妨げられている現場も存在していました。
そこで、当社の映像圧縮ソリューションを活用いただくことにより、高画質・低遅延、そして安定的な映像供給体制を実現。これにより、“効率化につながる”リモート監視体制を整備できたことで、お客様にご満足いただけています。
―――効率化の一環として、映像がリモート体制の構築に貢献しているのですね。
**斎藤さま**
また、現場作業では作業を“見て覚える”ことが重要となる場面も少なくありません。しかし、熟練工の高齢化・リタイアに伴い、熟練工による新人作業員へのマンツーマンでの現場指導も実現が難しくなってきています。このような場合に、リモートでの映像共有があると、技術の伝承にもつながります。
実際に当社の映像圧縮ソリューションであれば、リアルタイムで一般には荒くなりがちな細部までも鮮明に映るため、リモートでのマンツーマン体制の指導も実現可能です。応用的に、遠隔での状況監視が主となる船舶での作業や、医師が常駐できない場合などの遠隔医療などにおいても注目いただいております。
もちろんこのほかにも、世界中を映像でつなぐ必要のある場面で、広く活躍する技術です。
―――TMF Earth社様の映像圧縮ソリューションが、映像に関わるあらゆる分野で、幅広く活躍が期待される技術であることがわかりました。最後に、今後どのような展開を考えられているのかを教えてください。
**斎藤さま**
もともと、私は漫画の世界にあるようなアイテムをつくりたいと構想していました。たとえば、世界中に瞬間移動ができるドアのように。
この瞬間移動はまだ実現が難しいでしょう。しかし、ARやVRのような技術がさらに発展を遂げて、視覚的に情報を共有することで、あたかも遥か離れた土地にいることを感じられるような状態をつくれるかもしれません。当社の映像圧縮ソリューションは、その鍵となりうる存在だと考えています。
また、今後通信インフラの維持が課題となった場合に、無線で世界中をつなぐ必要が出てくる可能性もあります。すると、容量の大きな映像データを、データ品質を下げずにどう送るのかが課題となるはずです。そのような場合にも当社の映像圧縮ソリューションを用いれば、映像品質を損なわずに遅延もなく送信できる点で、貢献できると考えます。
とはいえ私たちの最大の強みは、お客様が抱えている課題に対して、最適なソリューションを提供できることです。そのため、今後も現在の映像圧縮ソリューションをベースに、時代の進歩とお客様のニーズに合わせた最適なソリューション提供をしていきます。
TMF Earth社様の映像圧縮技術は、ただのデータ圧縮技術にとどまらず、さまざまな産業や社会に変革をもたらす可能性を秘めています。技術の発展に伴い、今後さらに映像の重要度が増していくことが想定される中で、同社の映像圧縮ソリューションから目が離せませんね。
TMF Earth社の映像圧縮ソリューションについて詳細を知りたい方は、下記よりお問い合わせください。