設備保全とは① 予防保全(定期保全)と予知保全の違いは?
概要
各生産現場において使用している設備・機械は必ずいつか故障が発生します。その故障と常に向き合い原因追及・対策・予防などを行っている「設備保全」の重要性について触れていき、どうすれば生産に影響を出さず修理が完了するか考えて、シリーズで紹介して行きたいと思います。
設備保全とは
設備保全とは、設備性能を維持するために、設備の劣化防止、劣化測定及び劣化回復の諸機能を担う、日常的又は定期的な計画、点検、検査、調整、修理、取替えなどの諸活動の総称」(JIS Z 8141-6201)と定義されています。
要は、設備保全の仕事は、工場の機械を安全に動かすために、点検や修理を行う仕事です。工場にとって生産に使う機械は一番重要であり、これが壊れると生産性が落ちてしまい、お客様に迷惑をかけておかけするだけでなく、会社の損失に直結します。そのため、機械が壊れないようにしっかり「保全」を行い安定生産につなげていきます。
設備を動かすために点検・修理すると一言でいっても細分化すると設備保全の主たる目的は大きく3つあります。
①工場の機械や設備の故障を未然に防ぎ、安定稼働と品質の確保を行う
ー主に予防保全(定期保全)、予知保全、生産保全
②設備故障発生時、早急に対応し元の状態に復帰し生産できる状態にする
ー事後保全
③現状の設備や製造段階において改善を繰り返し行い、無駄のない現場・作業しやすい現場・安全な現場に改善する
ー改良保全・保全予防
〔その他〕設備保全の組織に関する集中保全
以上となっており、それぞれどのような保全内容・業務内容なのかご紹介していきます。
維持活動
―工場の機械や設備の故障を未然に防ぎ、安定稼働と品質の確保を行う保全
予防保全(定期保全)
故障が起きる前、すなわち未然に故障を防止する保全活動で点検や、消耗・磨耗した部分の交換があげられます。 予防保全はあらかじめ作成した保全計画に従って定期的に点検や修理、部品交換などを実施します。この保全計画は、メーカーが示す推奨使用回数や使用期間、さらに生産状況や生産数等にもとづいて決められるのが一般的です。
主な内容をあげると、「ベアリングの定期交換」「空油圧関係の圧力点検」や「ロボットやチェーンへのグリスアップ」など内容は様々ですが各設備に対して必ず点検箇所が存在するため予防保全活動は設備を動かすうえで欠かすことができませんし、もちろん各設備において専門的な知識・技能が必要となってきます。(参考写真①:ベアリングへの給脂作業)
写真①:ベアリングへの給脂作業
予防保全活動は、特にライン生産など大量に製品を作っている現場で重要視されます。決まった時間に決まった製品を決まった数だけ製造しているライン現場においては、時間基準・生産数基準で保全活動を行う予防保全とうまくマッチングしているためです。定期的なメンテナンスを実施し突発的な故障や不具合を防ぐことができれば、製品の品質を担保すると共に工場の機械や設備の安定的な稼働につながるので会社全体の損出を削減することができます。
しかし一方で過剰保全になってしまう場合があるのも現実です。例えば設備を動かすための「ベルト点検」という項目があると定期的にベルトの点検を行いますが、何も不具合無く点検が終わるということが多々あります。しかし点検日は定期的に決まっているので、その都度カバーや付随の部品を外して作業しているのです。予防保全には、こういった作業が多々あるので点検作業の改善や根本的な作業見直しということも、これからの設備保全には必要となってきます。
予知保全
設備の動きを監視して故障が状態発生しそうな状態を検知・予知し、それらが発生する前に修理や部品交換などを行う保全方法です。
予防保全と類似しているように感じますが、大きく異なる点として予知保全は決まった点検周期が無いということです。時間基準で点検する予防保全に対して予知保全は設備の状態を把握して適切なタイミングのみ作業を実施するので無駄な工数や部品代が発生しないという大きなメリットがあります。例えば、油の圧力が5MPA以下になったらフィルターの交換をしたり、設備の振動が大きくなってきたら、ばらして点検するなど、ある閾値をあらかじめ決めておいて、その閾値範囲外になったらそのタイミングで点検するということです。
無駄な点検作業が少なく一度予知保全の環境を整えてしまえば、それ以降において保全費用・保全工数・生産停止での損出を低減することができるので、大きな効果を得ることができるでしょう。(参考写真②波形による設備の兆候管理参照)
写真②波形による設備の兆候管理
設備の兆候を監視し最適なタイミングで作業を行いますが、監視する体制をしっかりと整えないと設備の故障を発見できず、壊れたまま稼働することになります。設備が壊れ、異常停止すればそのタイミングで事後処理対応できますが、異常が出ずそのまま稼働すると不良品流出や作業員の安全面に関わってくることもあります。
予知保全では設備の状態を確実把握することと併せて、監視したことを運用までつなげる「しくみ作り」も重要になってきます。監視を行って異常が発見できても、修理が遅れてしまっては予知できたことが無駄になってしまいます。この両方が整った時、予知保全は大きな効果を発揮し、設備保全の助けとなるだけでなく、会社全体の損益につながることは間違いないでしょう。
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