VMS と SCADA と連携すると、どのようなメリットがあるのか?
概要
技術の進歩やスマートファクトリー化の流れにより、VMSとSCADAを導入する企業が増えています。しかし、いまだに2つのシステムを別々に管理しているケースが多く見受けられ、安全操業と効率化という面では、改善の余地があるのも事実です。
本稿では、VMSとSCADAを連携するとどのようなメリットがあるのかを、それぞれのシステムの特徴を交えながら解説します。
VMSとは?
映像を保存・管理・視聴する「映像統合管理システム・ソフトウェア」のことをVMS(Video Management Software/System)と言います。従来の工場では、同軸回線で設置されたアナログカメラの映像を一つのモニターで監視することが多くありました。
しかし、工場やプラントの生産を効率よく管理するには、工場全体に散らばった各映像を一括管理する必要性が出てきます。そこで登場するのがVMSです。VMSの導入により、複数箇所にある監視カメラ映像を中央管理室で一括して監視できるため、操業管理の効率化が実現できます。
近年ではネットワークカメラが普及したことで、よりシステム構築が簡単になった点も導入を後押ししています。拡張性にも優れているため、後述するSCADAやAIシステムとの連携が可能です。
SCADAとは?
工場やプラントのデータを、ネットワークを介して一元管理するシステムをSCADA(Supervisory Control And Data Acquisition)と言います。
構成としては、センサーからデータを取り込む「入力」機能と、得られた情報を元に各機器を制御する「監視・制御」機能、プラントデータや制御状況を見える化する「表示・管理」機能、PLCやDCSをつなぐ「通信基盤」という4つの機能から成り立っています。
SCADAのメリットは、現場のオペレーターが制御室からプラントの監視・制御ができる点です。ポンプの回転数や弁の開閉度をモニタリングでき、必要であれば画面上から設定値を変更して制御できます。ロギング機能も備えており、センサーやPLCから得られたデータを時系列にロギングし、履歴表示も可能です。
今や製鉄や製薬、食品、電力、環境など多くの業界で導入されており、産業界を支えるシステムとして活用されています。
VMSとSCADAの連携で実現できること
では、VMSとSCADAを連携するとプラントや工場ではどのようなことが実現できるのでしょうか。
最も大きな特徴は、監視カメラ映像から流れるライブ動画と工場やプラントのプロセス値を同一画面上に表示できることです。その他にもVMSとSCADAを連携することにより、以下のようなことが実現できます。
- データとライブ動画をワンクリックで表示できる
- 同時刻のデータと録画動画を同時表示
- 圧力や流量などの様々なデータと動画を同時表示
- 過去と直近のデータと動画との比較
- ライブ動画を見ながら遠隔操作が可能に
- データと録画をエクセルシートで管理できる
- AIを使ったアラーム通知
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トラブルに対してより迅速な対応ができる
VMSとSCADAを連携している場合としていない場合とで、一番大きな違いはどこでしょうか。それは、トラブルに対して迅速で確実な対処ができるかどうかです。
SCADAが示すデータから何らかのトラブルを察知したなら、現場の状況をすぐに「目」で確認することが、重大事故を防ぐためには大切です。しかし、プロセスデータとライブ動画を別々に管理している状況では、オペレーターが2つの関連性を解析するために時間がかかってしまいます。
一方、VMSとSCADAを連携している状況では、異常を示すデータとそれに対応カメラ映像を同一画面上に表示できるため、オペレーターは瞬時に対処法を考えることができます。例えば配管内の流量に異常が認められた場合、配管に亀裂がないか、ポンプに異常はないかなど、カメラ映像ですぐさまチェックできれば、因果関係を早急に把握できます。
また、洋上風力発電所ではそもそも風車が遠隔地にあるため、トラブルが起きてもすぐに現場に駆けつけることはできません。しかし、カメラ映像でブレードが破損していないかを瞬時に確認することにより、影響範囲を特定することができます。
VMSとSCADAを連携は、熟練技術者の不足を解消するソリューションでもあります。なぜなら、過去データを保存していることから今まさに起きているトラブルと、過去に起きた同様のトラブルとを比較検証でき、若手社員でも確実に対処できるからです。
さらに、全国各地にあるプラントを一括管理できるシステムも構築でき、現地に赴くことなく熟練技術者が遠隔から操作できるリモート操業も可能です。
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