【特集記事】洋上風力発電で、VMS はどのように生かされるのか?【前半】

洋上風力発電の導入背景

昨今、カーボンニュートラルが推し進められる日本で、洋上風力発電に注目が集まっています。

経済産業省では、脱炭素社会の実現に向け、2019年に「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律(再エネ海域利用法)」が施行、引き続き2021年6月には、企業の挑戦を後押しする産業政策 「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」の改訂版が発表されました。同時に2030年までに10GW 、2040年までに30〜45GWの導入を目指し、「洋上風力産業ビジョン」を掲げています。

政府の後押しに、今後、洋上風力発電の導入が進んでいく中で、VMSをどのように生かしていくのかをご紹介します。

目次

洋上風力発電の安定稼働とメンテナンスの課題

洋上風力発電施設の設備は洋上の沖合に設置され、台風や高波の時には、トラブルが発生してもすぐにアクセスすることができません。

また、日本特有の気候によって発生する落雷直撃によるブレードの破損や、ナセル部分の機器故障など、日常的な運転状況の監視ができず、トラブルや不具合の早期発見ができません。

様々なトラブルによって引き起こされる稼働停止が、効率的に運用する上での問題点となっています。

 

台風や高波時に洋上風力発電の状況を確認できない

日本は、洋上風力発電事業が先行する欧州に比べ、台風、落雷などの自然災害が多く、運用にあたって様々な対策が必要となります。

台風の際は、船で海を渡れず風車にアクセスすることができない為、陸上風車と比べ、現場作業の機会は著しく低くなります。

定期巡視点検などの目視点検が必要な際は、天候が安定している日を選び作業実行しなければならず、計画通りに点検ができません。

落雷によるブレードの破損を目視できない

日本の雷は、通年では中部日本海側、夏季(4月~10 月)では関東甲信、冬季(11月~3 月)では中部日本海側に多く発生します。

洋上風力発電は陸上風力発電に比べ、大型化が可能なため、風車が大型化する傾向があります。その分ブレードの高さが増し、落雷確率が高くなります。冬季にブレード被害を被った場合、積雪の影響で復旧までの期間が長くなりやすく、その期間の発電が停止してしまいます。

このように自然災害による発電量の低下は、火力発電では少なく、再生可能エネルギーの弱点の一つです。また、ブレード部分は洋上に設置されているため、陸上からの目視が難しく監視作業も困難になります。

※ブレード=風車の羽根の部分

ナセル部分の故障を確認できない

落雷による被害は、ブレードだけではありません。ナセル部分の主軸、増速機、発電機、ヨー駆動装置、制御システム、電磁界による誤作動など多岐に渡ります。電子部品などが焼損した場合、火災の原因となる場合があり、現場の状況を早急に察知しなければなりません。

wind-power generation nacelle

 

安定稼働とメンテナンスの対応策

ネットワークカメラとVMSで洋上風力発電を遠隔監視

アクセスが困難な洋上風力発電で異常が発生した場合の対策の1つとして挙げられるのが、VMSとネットワークカメラを使った遠隔監視です。SCADA(後編に続く)のデータ監視だけではなく、「人の目」に変わって「映像」から原因を分析することで、より精度の高い現場の状況確認ができます。

トラブルに見舞われ作業を実行する際に事前に詳細な情報を得ることで、必要な工具や部品を予め見極めた上で現場に向かうことが可能となります。効率的な復旧作業を実現することで、故障による停止時間が短縮でき、発電設備の稼働率を上げることで収益性の向上に繋げることが可能です。

 

落雷時ブレードの破損状況をVMSで遠隔監視

洋上風力発電へのブレードの落雷は、被害防止の調査が浅く決定的な対応策が確立されていないのが実情です。今後、洋上風力発電設備の安定稼働を目指すためには、遠隔地から現場の映像を確認できるVMSを使い「エビデンス」として活用することが必要です。映像を様々な角度から多角的に捉えることで、ブレードへの落雷対策を構築し、洋上風力発電設備の安定稼働に繋げることができます。

 

ナセル内の遠隔監視

落雷や何かしらのトラブルが発生した場合、ナセル内にネットワークカメラを導入することで遠隔から映像データを確認できます。また、VMSで複数のカメラを多角的に監視する事により、監視制御システムであるSCADAが停止した場合や、電子部品などが発火した場合にも、現場の状況をいち早く遠隔監視ができ、被害の拡大を防ぐことに繋げられます。起きてしまったトラブルを、VMSの「映像」とSCADAの「データ」として記録に残すことで、精度の高い「予知保全」に繋げることも可能です。

 

VMSを使って現場の異常有無の確認

陸上風力発電と違って洋上風力発電は、現地往訪が容易ではなく同様の保守作業には事実上困難が多々あります。このような課題に対して、人が簡単に行けないところの代替手段としてVMSは活用できます。

VMSを使って遠隔からの異常有無の確認を行い、現地往訪することなく落雷時やトラブル時に現場の安全が確認できれば、停止してしまった風車を遠隔から再起動することも可能です。

また、「予知保全」としてVMSの映像をAI解析システムに学習させ、事故の予兆がわかればトラブル時の対応時間の短縮に繋げることができます。

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洋上風力発電の安心・安全な稼働に向けて

洋上風力発電設備は、洋上に数百基と設置するケースが多く、国の施策に相俟って、今後も導入設置台数は益々多くなると予測されます。

現に、既存の設備に増設するケースもあり、オペレーションの複雑さとコストが増えていく状況にあります。

そこで、数百基と導入された洋上風力発電設備にVMSを導入することで、統合的に遠隔監視ができ、業務工数の削減と安定稼働に繋げることが可能となります。

洋上風力発電前半KV

まとめ

洋上風力発電の運用において、VMS(ビデオ管理システム)の活用が重要です。ネットワークカメラとVMSを用いた遠隔監視により、台風や落雷などで現場にアクセスできない場合でもトラブルの早期発見と対応が可能となります。これにより、安定稼働とメンテナンスの効率化が図れます。

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